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助成団体の活動例「(任意団体) できる。できない。じゃない!実行委員会」

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「(任意団体) できる。できない。じゃない!実行委員会」

新規設立団体への助成例をご紹介します。その名も「できる。できない。じゃない!実行委員会」(以下、実行委員会)。「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展」というユニークな名前の障がい者の作品展示会を企画運営する団体です。「助成金申請の経緯の前に、どうして、この団体を作ろうと思ったか?“放課後デイ”で働き始めたところから話さなアカンな。」実行委員長、やぶうちゅうさんが、自然体の関西弁で、ご自身の幼少期から展示会の未来まで包み隠さずお話くださいました。(2019年11月取材)

1.活動に対する「想い」の原点

障がい者も取り巻く人たちも生きやすくしたい!」

 私が子どもの頃、うちの母は家事も料理もしませんでした。身の回りのことは放置でしたので当然のように私は文句を言い、文句を通り越して母をののしりました。高校生のとき、母が障がい者だと知りました。知的障がいの中程度でした。事実を知ってからは母に対して、できないことを責める事がなくなりました。毎日笑顔でいることは難しかったですが、私の対応が変わると母の顔つきや、行動が変わってきたように感じました。希望が見えたようでした。
 親のことを理解したくて、「障がい」という言葉が持つ意味に興味を持ちました。私は自分の家族以外のことを知る為、「障がい」に携われる仕事がないかと探していました。そして、4年前、放課後等デイサービス(障がいのある児童が学校の授業終了後や学校休業日に通う、療育機能・居場所機能を備えた福祉サービス。以下、放課後デイ。)に応募し、勤め始めることができました。
 ここには「障がい」を持つ、小学1~高校3年生の子どもたちが通ってきています。最初の頃は、知識も乏しく、ただただ子どもたちと遊び話していましたが、時が経つにつれ、保護者にも目が向くようになりました。「障がい」をもつ家族と過ごすことの大変さ、気持ちなどについて考え始めました。
もし、面倒を見ている側の保護者の気持ちが落ちていたり、視野が狭かったりしたら、保護者自身が生きづらくなるでしょう。それは、子どもにも伝わって、子どもも生きづらくなる…こういった人たちが生きやすくなる環境を作ろうと思ったのです。サポートする大人が元気でいればみんなやっていける。その表現方法として考えたのが、タイトルに思いを込めたアート作品を用いた「展示会」でした。

「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展」2019ポスターの一部

2.団体設立の経緯

「障がい児だけでなく、周りの大人も参加する展示会を!」

 私には家庭の中だけではなく「民間の会社組織として障がい者の子どもを見ている支援者は、その組織・事業所の中だけで悩みを解決しようとしていないか…。」という疑問がありました。決められた場所だけにとらわれず、障がい者とその介護支援者が集える、横の繋がりができる場所がほしかったのです。そして、そこには障がい者が身近にいない一般の健常者にも普通に入ってきてもらいたいと考えていました。
 そこで、2018年1月に勤務先である放課後デイで、私は「放課後デイに通う子どもたちと、そこで働くスタッフのみんなで一緒に作ったアート作品の展示会をやってみませんか。」と発案しました。保護者や一般の方々の前で「障がいを持つ子どもと一般の子どもが集える場所を作りたい。」と言ったのです。「わかりました。やりましょう。」と、皆が快く答えてくれました。
 はじめは「私一人ででも展示会をやろう。」と思っていましたが、勤務先で想いを伝え行動を起こしていくには、想いを共にする『共友』なしでは達成できないことを学び、一人ではできないと気付きました。それから勤務先の同僚とも何度も何度も話し、私の想いが全員に伝わりました。

 私たちは一年かけて、展示会の準備を進めました。ですが、展示会には、どのくらいの費用がかかるのか、私はわかっていませんでした。ありがたいことに2019年3月の展示会の費用は、勤務先である杉並区の事業所、株式会社フェイトに提供してもらうことができました。3月の展示会の後、奈良県と千葉県の放課後デイの代表者から「来年はうちの施設も参加させてください。」、その他の施設から、「ぜひ協力したい。」と嬉しいお申し出を頂きました。大がかりな展示会になれば、人手も費用も必要になります。これ以上勤務先に負担はかけられないと思った私は、初展示に協力してくださった区内の方々に相談しました。「実行委員会を作って業務を分担したらどうか。助成金を申請してはどうか。」とご提案を頂き、相談した方々にも実行委員になって頂きました。

実行委員会準備委員会

3.団体設立以前の気づき

「アートを作る過程で変わった障がい害者の家族と介護スタッフ」

 話は前後しますが、2019年の初回展示会は、私が中心となって、周りの方に応援して頂く形で準備に当たっていました。準備期間中、放課後デイの活動の中で、月に一回は大きな作品を作っていたのですが、回をこなすうちに、保護者のお母さんから「作品展、楽しみにしています。」、「いつも案を考えてくれて、ありがとう。」という言葉を言われるようになりました。
 発語ができず、いつも決まった活動内容(体育、調理、化学など)しか受けていなかった子が、アートに対しては予想外に素晴らしい能力が発揮できたのを目の当たりにしました。準備を進めるにつれて、子どもが輝ける場所が増えていきました。
 作品展の当日に、お母さんたちにも来てもらうにはどうしたらいいか考えました。「初めての場所や、行ったことない場所にいくと不安。」とか、「作品展や博物館などの展示物が置いてある場所には迷惑をかけるかもしれないので、行きづらい。」と考えたことがある子もいると思います。そんな風に思い悩まないように、作った作品は全部、触ったり遊んだりできる物や、車いすでも遊べる物にしました。もちろん壊しても大丈夫です。それをチラシの中に盛り込み、伝えました。その場で作って展示するワークショップコーナーでは単純な工程でコミュニケーションが取れる体験を取り入れることで、遠慮していたお母さんたちも「はじめて、こんなのやりました。」「こんなこともできるのですね。」と話してくれました。
 スタッフの中でも変化が見られ、アートを通じて子どもたちについて話すようになっていました。例えば「空は青色だけ、夜空の星は満天で、たくさん書き込むべきだ。」「でも、それは『大人から見て正解だと思うものが展示できる作品だと決めている』のではないか。」子どもが空を茶色で塗っても、星を1個しか描かなかったとしても、アートは個人の想いです。「大人が全部塗ったらダメでしょ、塗りたい色が個性でしょ。」このような会話を、スタッフとの間でするようになりました。そのうち、星をいっぱい描くことが正解だと思っていた人も、「ちょっと描くだけという考えがあっても良いんだ!」と理解してくれるようになったのです。
 2019年3月開催前には保護者とスタッフ全員が一つの目標に向かって進んでいきました。

「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展」2019当日

4.団体を作って感じたこと

 実行委員会を立ち上げて、自分が委員長になったからか、展示会の継続開催の責任を現実的に受け止めています。また、区役所に申請しなければいけない事柄が出てきたり、区内外で地域活動をしている方々との交友関係を深めたりして、自分自身の活動範囲が広がってきました。区役所内で顔見知りが増えました(笑)。

5.助成金申請

 展示会の費用について、出展事業所には出してもらおうと実行委員会で決めました。助成金の利用は、区内で長年活動している実行委員からの提案でした。その時、2019年5月後半時点で、法人になっていない団体が来年の3月のために申請できる助成金として、未来をつなぐ子ども資金(以下、子ども資金)の助成金を教えてもらいました。用途としては、2020年3月の展示会の場所代、当日のワークショップの材料費、事前に作成する宣伝チラシ、物を運ぶ時の駐車場代とワークショップを指導頂く臨床美術士への講師代です。実行委員会は無償で展示会を運営します。選考の結果、申請額の5万円全額を助成して頂けることになりました。

6.今後の団体の活動

 次回2020年は出展して頂く事業所を増やして、さらに多くの方に「障がいを持つ特性」を知ってもらうきっかけを作りたいです。皆が参加者であり、開催者になってほしいと願っています。障がいを体験する企画、その場で参加して頂けるワークショップ、障がいを知ってもらえるパネルの展示をする予定です。保護者の方も「障がい」をいろいろな人に見て頂いて、知ってもらえれば、それだけでホッとすると思います。大人も健常者も「できる。できない。じゃない!」って気づいてほしいのです。「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展」という展示会のタイトルは、障がいを持つ子どもだけではなく、サポートをしてくれている大人へのメッセージを込めています。皆でつながって、子どもと大人で1つのものを作る作品展を続けていきたいです。
(編集者注:「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展2020」は、開催直前の2020年2月下旬、新型コロナウィルス感染拡大のためやむなく中止を決定しました。)

2018年1月  障がい者施設内で1スタッフとして障がい児参加の作品展を提案
2018年5月  次の年に展示会に向け、障がい児たちが作品制作を開始
2019年3月 「できる。できない。じゃない!やってみるんだ!展」初開催
2019年5月  実行委員会設立準備会合を実施
       子ども資金の助成金への申請を決定
2019年7月  実行委員会設立
2019年8月  すぎなみ協働プラザに団体登録
2019年9月  子ども資金の助成金を受領
2019年11月 杉並区に障害者福祉団体として後援を申請 
       杉並区社会福祉協議会に団体登録
       杉並ボランティアセンターに登録団体 
       すぎなみ協働プラザ発行のNPO情報誌「CAMP」に掲載

フェイスブック
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メールアドレス
dekirudekinaijanai@gmail.com

 

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